岡山 税理士とは?その評価と現実

債権者にとっての債権回収の機会は、特別清算開始決定後でも十分可能です。 しかも、民事再生や破産と違って、債権者と債務者が話し合いを通して弁済し、債権を回収するという手法をとれるところに特別清算の手続きとしてのよさがあります。
しかし、特別清算の開始決定が下りてしまえば、会社財産に減少をきたすいっさいの行為は裁判所の許可をとらなければなりません。 このため、実務的には、裁判所にもちだす前にできるかぎりのことを処理しておくのが賢明です。
特に、金融機関が甲会社の債権者である場合には、親会社は連帯保証人になっているでしょうから、親会社は連帯保証債務の履行という意味においても、特別清算の開始決定前であろうと後であろうと、当該金融機関に対する甲会社の債務を肩代わりせざるをえないでしょう。 このような事情から、親会社が上場に向けて不良債権を処理する場合には、通常、親会社が甲会社に対する債権者に対し、肩代わりして弁済ないし債務を免責的に引き受け、甲会社に対する債権者が親会社1人だけになるまで整理したうえで、特別清算の申立をするという方法をとるのが一般的でしょう。
こうすれば裁判所の負担は著しく軽減しますから、手続きは迅速に進行し、3カ月以内に終結することも可能になります。 債権者の一本化に関して注意がいるのは、租税債権です。
租税債権は、原則として話し合いで弁済額を減額することができません(原則として、というのは、地方税法の場合は延滞金を減免してもらった事例がかなりあるからです。 東京都の場合は、東京都都税条例施行規則第41条)oまた、租税債務が残っているかぎり、裁判所は特別清算手続きの終結をしてくれません。
親会社が立て替えて支払わざるをえなくなります。 この点は、破産とは異なる点です。
特別清算手続きが終結すれば、甲会社の登記簿謄本は裁判所の職権で抹消されますから、親会社の甲会社に対するいっさいの債権は、税法上も満額貸倒として損金計上できることとなります。 親会社が甲会社に対する他の債権者との関係では、それら債権者に対し、甲会社に肩代わりして弁済するか、免責的に債務引き受けをして債権を一本化する場合には、当然、債権者にそのような会社分割手続きをすすめることが知られてしまいますから、会社分割決議を公告し、債権者に催告する手続きをとるとらないにかかわらず、債権者の了解のもとに手続きを進めることになります。
したがって、会社分割にともなう会社財産の移転の仕方については、思い切って資産だけを乙会社に移転し、負債はできるかぎり甲会社に残すことが可能になります。 この方法で分割された乙会社は、会社分割の直後から資産内容がよく、収益性の高い状況を実現できることになります。

私が扱ったこの種の会社分割では、会社分割前には長期間赤字で苦しんできましたが、新設した乙会社は初年度から黒字という実例があります。 分割後の甲会社は特別清算で終結し、甲会社の登記は抹消されました。
話が少し飛びますが、「親会社が子会社に対する不良債権を処理したいのだが、その子会社には収益性とか将来の見込みがある事業部門が含まれている」というような事例では、その子会社甲の商号を乙会社の商号として使用したいという場合が多いだろうと推定されます。 会社分割後に甲会社をつぶすにしても、どうしようもなくなってつぶすのではなく、いわば計画的に甲会社を処理し、新たに乙会社を発展させていこうということです。
できるだけ親会社の信用に傷がつかないようにしたいわけですから。 このようなねらいを達成するためには、会社分割登記のほかに、甲会社の商号を、甲会社の商号の臭いさえしない、まったく別の商号に変更し、それと同時に乙会社の商号を甲に変更する登記をしなければなりません。
もちろん、会社分割登記をしたあとで商号変更登記をすることもできますが、どうせなら、会社分割より先にまず甲会社の商号を甲会社とはまったく関係のない商号に変更したのち、会社分割手続きにかかり、乙会社の商号を甲とするほうが賢明でしょう。 特に、乙会社の本店を分割前の甲会社と同じにしたいときは、この順番のほうが賢明でしょう。
このように、乙会社の本店も商号も甲会社と同じにすれば、外形上、分割前の甲会社が特別清算に入ったことさえわかりません。 もちろん、法人登記簿を取り寄せれば、甲会社から乙会社が分割されていったことも、乙会社は甲会社から分割されてきたことも登記面に現れますから、すぐに判明します(商業登記法第89条の6,商業登記規則第86条の5)。
会社分割に関係する商法とか民法という法律は、一方に分割する会社、その債権者、株主、他方には承継会社、その債権者、株主という民間対民間を規律するだけの法律です。 私人と私人との、いわば水平関係を規律する法律です。

しかし、民間の事業、営業であっても、私人対私人の関係だけではすみません。 “お上”との関係があります。
民間企業より一段高いところにいて、民間を上から取り締まっている行政官庁があります。 実に数多くの企業が役所から許可とか承認、登録などをもらわなければ事業ができないしくみになっています。
役所の許可とか承認とか規制がたくさんあり、いささかうるさいほどですが、公衆の安全維持の視点からみれば、やむをえない規制として我慢しなければならないものがほとんどです。 問題は、会社分割をしたときに、これがどうなるのかです。
「役所としては会社分割など知らない。 この事業は公衆の安全にかかわるのだから、あらためて許可を申請しなさい。
許可が下りるかどうかはわからないが、申請があれば検討することだけは約束しましよう」というのでは困ります。 これらの業種は、行政官庁の許可がなければ営業できないのですから、会社分割をしても許可や承認が得られる見込みがなければ、会社分割が商法で認められたといっても大して意味がないことになってしまいます。
特に、事業の開始に莫大な設備投資を必要とする事業では、切実な問題です。 大きな設備投資を必要とする事業ほど、投資金額回収の道が開けていなければなりません。
会社分割によって許認可を分割会社に承継できれば、許認可を必要とする事業を会社分割によって新設分割、あるいは吸収分割し、株式の売却によって投資資金を回収することができるわけです。 Sさんは、管轄の役所から許可を取得して営業を始めましたが、不慮の事故があって亡くなった途端、営業許可は効力を失い、店をたたまなければならないとしたら、これは問題です。

そのため、個人については相続というしくみがあります。 会社の場合は、包括的になにもかも承継できる合併のしくみがあります。
亡くなったご主人が取得していた営業許可を、遺族がその気になれば相続できるとすれば、会社の場合、合併があっても同じ営業許可の承継を認めるべきでしょう。 とすれば、会社分割の場合も、合併とは方向が反対なだけで、組織変更としては同じ性質なのですから、承継会社に同じ許認可の承継を認めてもいいのではないかと思いますが、問題はそんなに簡単ではありません。
たしかに、会社分割による承継は包括承継ですから、個人に関する相続や会社の合併によく似ていますが、相続や合併と根本的に違うところがあります。 それは「つまみ食い」ができるところです。
相続では、遺言状を作った場合は別として、親が子に、「あれは相続させる」「これは相続させない」と、相続させる物件を選ぶことはできません。


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